投稿

ヨットはなぜ風上に進めるのか (訂正)

物理的に必要な本質条件がもう一つあることが分かりました。ヨットを押すときの反力(抗力)が船が進む方向には弱く、これと直角方向には強いことが必要です。これは、ヨットの底に垂直な板を装備していることで強調できる。昨夜、酒を飲んでいる途中に、甥っ子に電話した際、指摘されました。彼は、このことを説明する際、ヨットを球状 (あるいは、水面に対して直立した円柱状) にしたときの思考実験を提案しました。これに対して私は間違った反論をしたようです。酒のせいか、あるいは、年寄りにありがちな思い込みかが原因でしょう。夜中に目を覚ました布団の中で誤ちに気がついた次第です。  ヨットが風上に進めるための本質条件   1. 帆の角度が変えられる(風のくる方向に対して正しい角度を作る)  2. ヨットが水面に浮いている(水と空気の密度が異なる)  3. 船の抗力が、進行方向に弱く直角方向に強いこと

艪を前後に動かして、なぜ船は前に進むのか

イメージ
子供の頃、近所の家にはほとんど伝馬船があった。当時ハチダ (八打)網と呼ばれる漁業共同体が盛んであった。夕方に船団で出かけ、鯵、鰯などを獲って、朝に戻ってくる。その魚を受け取りに行くために必要であったからだ。大人の男だけでなく、女も子供も伝馬船の艪を漕いだ。子供は、特に男の子は、少しでも早く大人に近づきたいので、泳ぎ方を覚えるのに次いで、これに挑戦した。  いわゆる、和船は、エンジン (当時はモータといった) を積んでいない限り、艪を使う。大小の差こそあれ、どれも構造は同じである (写真) 。長い樫の木でできている。手元の端から肩幅位の位置に、外側に向けて垂直に短い棒が刺してある。この棒にロープ穴を通して、ロープを足元の床に固定してある(速緒と呼ぶらしい)。艪の途中に、丸い穴をうがった部品を取り付けてある。この穴に挿入するようになっている、丸い出っ張りを有する棒が船のトモ (後端) に固定してある。  私が、艪の原理についていつごろから考え始めたのかは定かでない。。学校で理科や物理を習い始めてからのことである事は間違いない。答えを得たのは、少なくとも大学在学以前である。会社に勤め始めての最初の夏休みに、同期の男2人とその他の2人が一緒に五島に遊びに来た。その中の1人であるO君 (東大教養学部卒) に言われたことを覚えている。「五島に来て、赤岩に物理のあれこれで頭を使わされた」。多分、その時、彼に艪の原理について、例の調子で議論を仕掛けたのだろう。  櫂やオールなどは、水を後方にかいて進むので、その原理はすぐに理解できる。これに対して、艪の動く方向は進む方向に対して直角になっている。秘密はその断面形状にある。飛行機が浮力を得るために翼の断面が、下側が平板で上側が丸みを帯びている構造になっているの知っている人は多いだろう。艪の断面もこれと同じである。艪の推進力は、相対速度が飛行機に比べて低いものの、水と空気の比重の違いにより、そこそこ大きくなる。実用上、その他の工夫がよくなされている。艪を動かすのに、支点が小さいこと、ロープで床と繋いでいるだけなので動かすときに力の損失は少ない。また、体重移動で動かせるので、疲れが少ない。しかし、艪の長い方の先端を少しでも持ち上げられると、支点から外れてしまう欠点がある (ボートのオールは受け口が円形状になっているのではずれない)。これ

ヨットはなぜ風上に進めるのか

  ヨットはなぜ風上に進めるのか 子供の頃に、帆掛け舟を自分で作って遊んだ。板をナイフで削って帆柱と梶を竹で作り、紙の帆をかけた簡単なものだった。生まれ育った奈留島にはかなり大きな湿田があり、我が家もそこそこの田を作っていた。湿田であり水が深く、農作業は大変だった。その代わり、ドジョウ、フナ、おまけに、ウナギがたくさんいた。稲を刈り取った田んぼは、大きな池のようになる。冬にはたくさんの鴨が飛んできた。   帆掛け舟を風上から離すと、向こうのあぜ道まですーと走ってくれる。その走りは、当時はやっていた、ゴム巻きのプロペラ船には比べようのない優雅さである。たまには、田んぼの真ん中でひっくり返って、靴を脱いでズボンをまくって回収しに行く羽目になったり、あぜ道で足を滑らせて田にはまり込んだりした。 結婚して実家に帰った時に、父親が記念かどうかわからないが、 FRP 製 ( 奈留島初 ) の伝馬船を買っていた。 8 馬力のエンジンを積んでいた。無免許ながら二人で沖合の無人島まで行き楽しんだ。ある日、カミさんに頼んで、大漁旗を縫い合わせて帆を作り、船につけて、甥っ子達と静かな走りを楽しんだ。子供ができてからは、遊ばせるために、船体を桐の板で作り、底に鉛板の重りをはめ込み、帆柱も前後に糸をかけて補強し、帆布に防水スプレーをかけて作った。熱海の海辺の水たまりに浮かべて、子供たちと遊んでいる写真が残っている。 その後は、ラジコンのヨットを買って組み立てた。子供たちはあまりのってこなかったので、夫婦 2 人で楽しんだ。相模湖で走らせていたとき、遠くへ行きすぎてしまい方向がつかめなくなり、制御不能で戻すことができなくなった。幸いに、手漕ぎボートで遊んでいた人が回収してくれたことを思い出す。 写真にある のは、 2 艘目のものである。九州に引き上げる直前に買ったと思う。高さは 1.9m 、長さは 1m ある。宗像市の水源地である大井ダムで走らせていた。途中で金網が張られ立入禁止になったので、その後、屋根裏にしまい込んだままである。孫が興味を示したら、また浮かべたいと思う。 前置きがずいぶんと長くなった。ヨットが風上に登ってこれるので、ヨットを走らせるときに、風向きをそんなに気にする必

音響 ‐ 聞こえない音が大事 -

人間の耳には高い周波数の音は聞こえない。ある会社で10キロヘルツ (kHz) のトーン (正弦波) 信号を作成して聞いていたところ、社長と私には聞こえなかった。そばにいた社長の奥さんには聞こえた。彼女は60歳代、我々2人は70歳代である。昔の時代劇小説家で、五味康介と言う人がいた。彼は音響 (オーディオ) マニアとしても知られていた。高齢になっても、タンノイ社の馬鹿でかい最高峰スピーカー、オートグラフをラックス社の真空管アンプで鳴らしていた。意地の悪い評論家は、高齢の彼の耳が高い周波数の音を聞けるはずがないとして、その高価な音響装置が無駄と言っていた。実は、私もオーディオマニアの端くれである。タンノイのスピーカーDC386 (直径38cm ウーファー + 同軸ツイータ) をラックスの純A級アンプL-560で鳴らしている。スピーカーの箱はユートピア社のもので、高さ100cm、幅60 cmのW型開放構造である。何年か前に、タンノイが新しく出した、外付けスーパーツイーターを買った。これは14 kHz以上の音を再生でき、調整用ネットワークが付いている。娘が私を馬鹿にして、耳に聞こえない音を出すスピーカーを、騙されて高い金を払って買ったと言っていた。このような指摘に対して、私は今まで反論を重ねてきた。LP時代の録音においても、高い周波数成分が音質に重要である事は、専門家には経験的に知られていた。  CDが出たときの音を聞いて、ずいぶんと違和感を感じたものだ。その標本化周波数が44.1 kHzであるので、音楽信号の20 kHz以上の周波数成分を除去しているのも、1つの原因である。これらの詳細については、私が書いた教科書「信号処理の基礎」で「 標本化定理余話 」として書いてある。興味がある方はクリックしてみてください。その中で言及している、音の聞こえ方の実験を皆様に試みてもらうため音源を作成した。聴いてみてください。音質を重視するためWAVファイル形式です。聴けない人はをWAV をMP3に変換してくれるサイトに当たってみてください。  最初は 1 kHzのトーン信号 です。機器が正常に動作していて、これが聞こえなかったら耳鼻科で耳の検査をしてもらうべきです。  次は 18 kHz信号 です。聞こえた人があればお知らせください。  最後は 18 kHzと19 kHz信号 を足し算し

高橋純子

この人を知っている方は少ないと思う。朝日新聞の「多事奏論」の執筆者(編集委員)の1人である。彼女の書いた論説をいつも楽しみにしている。1番面白いと思ったのは、今年の2月3日(水)に載った「緊急事態の首相  ラケット握らずコートに立っても」である。出だしは大体私事から始まる(私のブログも同じ )。最近亡くなった、半藤一利 (元文芸春秋編集長、昭和史の著述が多い)からもらった、はがきについて書き始めている。半藤の言いを用いて、安倍前総理と菅総理の政治の行い方について、批判する。その後、記者会見や国会審議を、テニスの試合でのボールの打ち返し合いに例えている。  菅総理については、そのまま1部を引用する。「だから私はこの4ヶ月半、首相がなぜテニスが下手なのか、ずっと考えてきた。やる気がないのか。向いていないのか。練習不足か。そして気づいた。首相は打ち返すどころかそもそもラケットを握っていない。首相がやっているのはいわばドッジボール= 避球「投げられるボールを避け(dodge)逃げ回るところから生まれた名称(ブリタニカ国際大百科事典)である。日本ドッジボール協会の理念にはこうある。「ドッジボールではその「かわす、逃げる」が真髄なのです」「上手に逃げることができればヒーローにもなり得るのです」(引用終)。  そして結びはこうなる。「前首相はラケットを握ってはいた。だがアウトをインと言い張ったり(結局やっぱりアウトだったり)、ルールを読み変えたり、相手を野次ったりして、競技を汚した。それと比べてどちらがマシか、なかなか答えに窮するが、コートに立つなら下手でもラケットを握る、さもなくば退場、どちらかしないと、ひとまず、申し上げて、私からの挨拶とさせていただきます」。ここで最後の言い回しは、政府の代表としての挨拶における菅の当事者意識のない言い回しを真似て皮肉っている。  3月10日(水)の題目は「女性と「自称めいた怒り」個人的な事はパワーに」である。森( 前首相、前オリンピック組織委員会長)と、政府の広報官山田真希子を批評している。前書きには、ある大学での講義の後で、ある学生から、彼女が書いた批評は「個人的なことが書かれているだけ」との感想が寄せられたと書いてある。(個人と政治が結びついていることを人々、特に若い人たちは実感できていない。だから、阿部、菅政権への若者の支持率が高い(

邪馬台国サミット2021

この番組は、今年の元旦に放送されたものだ。最近、再放送されたので録画しておいてみた。観終わってからの感想を一言で表すと、「がっかり」である。なぜ、そのように感じたかを考えて、ここに書くことにする。見終わってからすぐ消してしまったので、残念ながら、詳細を確認することができない。題名も定かでなかったので、ネットで検索した。そこでの番組の紹介をそのまま下に書く。   女王・卑弥呼の都「邪馬台国」はどこにあったのか?九州説と近畿説の論争は、どちらも決定的な証拠を示せないでいるが、その一方で、近年、邪馬台国をめぐる考古学的な発見も相次いでおり、議論はますます白熱している。第一線の研究者たちが集結し、最前線の証拠や資料を検証し、激論を繰り広げる。令和の時代の最新の知見を織り交ぜた「邪馬台国論争」決定版! 参加者がこの道の研究者とあるので、最新の知見に基づいた議論がなされるものと誰もが期待するだろう。司会者は、私は名前と顔だけを知っている、2人の芸人 ( 爆笑問題 ) である。意見役 (コメンテータ ) は、東大教授の本郷和人 (何か読んだことがある)だ。専門家は7人であり、うち3人が北九州説、残りの3人が近畿説、残る1人は三国誌の文献学者である。伝説的研究者(レジェンド)として、吉野ヶ里遺跡の発掘を主導した高島忠平 (吉野ヶ里遺跡の見学会で、見学者の1人が、彼に邪馬台国所在の意見を聞いたところ、筑後平野の甘木地方を指差したことを私は覚えている)と、巻向遺跡を発掘した、近畿説論者と思われる石野博信である。彼ら2人は特に自説は述べなかった。   この番組で新事実と紹介したのは、まず、巻向 (桜井市) の遺跡で見つかった建造物跡と数千個の桃の種である。桃の種の放射性炭素年代測定を行ったところ、3世紀前半と推定された。これは卑弥呼の時代と合致する。桃は占いに使用されたようだ。建造物の材木に対する年代測定は、伐採年と実際に建物に使われたときの時間差が誤差となるので、どうしても年代が古く(早く) なるの。そこで前から異論が出ていた。桃の実であれば、このような年代差は無視できる。映像は何度か示されるものの、このような事実背景は説明されない。  近畿説の拠り所は、巻向遺跡のみである。巻向 (大和)を中心として、周りに九州、吉備、出雲を結んだネットワークがあったと言う想定のようだ。専門家で名前

コンテナの重心の計算と測定法

  海運関係の仕事についている知人から相談を受けた。コンテナに貨物を積み込んだときに、重心がどこになるかを計算で求めたいと言う。コンテナを高く積んだ貨物船が沖を通るのを何度か見たことがある。重心が偏っていると、船が傾いて転覆する恐れがあるので、これは重要な問題である。会社で使っている計算ソフトではコンテナの重量を加味していないので、明らかに間違いがあると言った。説明を聞いて、すぐにその指摘は正しいと分かった。そこで、簡単にモデル化して計算した結果を渡していた。高校 ( 中学 ) の物理の問題としても、初歩的なものである。その後、もっと簡単に答えが出せることに気がついた。ここでは、そのいきさつと、計算で求めた重心位置を、測定で検証する方法を説明する。図を描くのは煩わしいので、言葉と数式のみを用いることにする。   立方体であるコンテナを、重さが同じの細長い板で近似する。幅は狭いので、長手方向のみを考え、 1 次元の問題に簡略化する。この板の一方の端(左側)の位置を原点とする座標 x を考える。板の重さを w 1 、長さを L とする。この板の上に、合計で N -1 個の貨物を置くものとする。それぞれの貨物の重さと、重心位置 ( 板の上の ) を、 w n と x n   ( n =2, 3, ・・ N ) とする。   求めるべき全体の重心位置を x c と表す。重心位置でコンテナ全体を支えると、左右が釣り合う。物理的には左右のモーメントが同じになると表現される。   先に求めた計算法は、板を重心の右と左に分けて考え 、右側の重心 x R =( L - x c ) /2 と、左側の重心 x L = x c /2 として、モーメントの釣り合いを計算していた。やってみると、途中で 2 次式が現れるので戸惑う。しかし、 2 次の部分は打ち消す結果になるので安心する。結果を示せば、   x c =( w 1 L /2+ w 2 x 2 , ・・ + w N x N )/ ( w 1 + w 2 , ・・ + w N )   となる。全体の重さを W = w 1 + w 2 , ・・ + w N   とおけば、   x c = r 1 L /2+ r 2 x 2 , ・・ +