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テンソル透磁率の非線形性について

  マイクロ波回路は、私の初めの研究課題であった。特に導波管サーキュレータは、私の学位論文の題目である。サーキュレータの大電力下での非線形歪みによる特性劣化が問題になる可能性があることを相談された。そこで、その理論を調査するため、1949年に出された論文、 D. Polder, ‘On the theory of ferromagnetic resonance’, Philosophical Magazine, vol. 40, pp. 99-115, January 1949 を探した。九大の理系図書館にあることが分かったので、久しぶりに伊都キャンパスをカミさん同行で訪ねた。名誉教授の特典として、図書館を使えることは知っていた。この特典を初めて使う事になった。 おまけに駐車料金が無料になった。この論文のコピーを取り読んでみた。学位論文に引用してあるので、読んだはずだが、しかし、内容が記憶にない。この論文を下敷きにして、きわどい議論を展開しました。 興味のある方は読んで ください。   概要 マイクロ波回路の一つであるサーキュレータはその非可逆性により、無線通信装置で重要な役割を果たす。これが、レーダーなどの高電力下においては、非線形歪みを発生することが知られている。ここでは、サーキュレータの非可逆性のもとになっている、磁性媒体(フェライト)の非対称テンソル透磁率の非線形性特性を理論的に検討した。結論として、サーキュレータの特性を悪化させうることが示された。透磁率における歪みを、近似を用いて現象論的に導入したある微少量を用いて表している。

すごい物理学講義(増補)

最も大事なところ(私が思う)が抜けていたので書き加えました。字句も訂正しています。 この本は、 2019 年 7 月に河出書房新社から出た。つい先日、私が読んだのは河出文庫に収められたものである。 2020 年 3 月で第 6 刷となっているのでかなり売れたのだろう。本の広告を目にしたことがあるような気がする。そのとき読まなかったのは、この本の題目に違和感を持ったからだろう。大げさな物言いは私の好むところではない。もともとはイタリア語で書かれている。英語版の翻訳では、 ’Reality is not what it seems’ ( 日本語の訳者によれば、「現実は目に映る姿とは異なる」とある。イタリア語で appare ( 英語: appear) が使われている。私には appear のほうがそののニュアンスをわかりやすい。この題目だったなら私は当時買っただろう。 著者はイタリア人の C. Rovelli である。素粒子物理の研究者であり、「ループ量子重力理論」の第一人者だそうだ。専門外の人向けに書いてある。イタリア本国をはじめ、欧米各国でベストセラーとなったいう。私も読み始めてみて、一気に読み終わるのが惜しくなって、たびたび、中断して読み終えた。量子重力理論とは一般相対性理論と量子力学を統一する理論を目指すものであり、まだ完成していない。「超ひも」理論と「ループ」理論と称される 2 つの学派があるそうだ。日本では「超ひも」の方が有名である。私が以前に読みかじったものはこれのようだ。「ループ理論」は、時間、空間、エネルギー、情報などがすべて離散状態、すなわち粒状であることを強調している。これに対して、「超ひも理論」はこの事にさほどこだわらず、連続的な状態を許容しているそうだ。「超ひも理論」によれば、未発見の粒子、すなわち、「超対称性粒子」の存在が必要となる。ジュネーブにある CERN ( 欧州原子核研究機構 ) は LHC ( 大型ハドロン衝突型加速器 ) と呼ぶ新型の素粒子加速器を持っている。これを使って、その超対称性粒子を探しているものの、まだ見つかっていない。 2013 年にヒッッグス粒子の存在を確認した事は、素粒子量子力学の標準理論の正しさを示して大いに話題になった。しかし、超対称性粒子は、そのときのエネル

すごい物理学講義

  この本は、 2019 年 7 月に河出書房新社から出た。つい先日、私が読んだのは河出文庫に収められたものである。 2020 年 3 月で第 6 冊となっているのでかなり売れたのだろう。本の広告を目にしたことがあるような気がする。そのとき読まなかったのは、この本の題目に違和感を持ったからだろう。大げさな物言いは私の好むところではない。もともとはイタリア語で書かれている。英語版の翻訳では、 ’Reality is not what it seems’ ( 日本語の訳者によれば、「現実は目に映る姿とは異なる」とある。イタリア語で appare ( 英語: appear) が使われている。私には appear のほうがそののニュアンスをわかりやすい。この題目だったなら私は当時買っただろう。 著者はイタリア人の C. Rovelli である。素粒子物理の研究者であり、「ループ量子重力理論」の第一人者だそうだ。専門外の人向けに書いてある。イタリア本国をはじめ、欧米各国でベストセラーとなったいう。私も読み始めてみて、一気に読み終わるのが惜しくなって、たびたび、中断して読み終えた。量子重力理論とは一般相対性理論と量子力学を統一する理論を目指すものであり、まだ完成していない。「超ひも」理論と「ループ」理論と称される 2 つの学派があるそうだ。日本では「超ひも」の方が有名である。私が読みかじったものはこれのようだ。「ループ理論」は、時間、空間、エネルギー、情報などがすべて離散状態、すなわち粒状であることを強調しているのに対して、「超ひも理論」はこれにこだわらず、連続的な状態を許容しているそうだ。「超ひも理論」によれば、未発見の粒子、すなわち、「超対称性粒子」の存在が必要となる。ジュネーブにある CERN ( 欧州原子核研究機構 ) は LHC ( 大型ハドロン衝突型加速器 ) と呼ぶ新型の素粒子加速器を持っている。これを使って、その超対称性粒子を探しているものの、まだ見つかっていない。 2013 年にヒッッグス粒子の存在を確認した事は、素粒子量子力学の標準理論の正しさを示して大いに話題になった。しかし、超対称性粒子は、そのときのエネルギーの範囲内では見つかっていない。これにより、「超ひも」派はがっかりしたそうだ。著者が上げるもう一つの実験