今年のノーベル生理学・医学賞

 

受賞者のスバンテ・ペーボ博士は、前にNHKの番組を観て知っていた。特徴ある人相と話しぶりが印象に残っている。旧人類ネアンデルタール人の骨を収集して、すべての遺伝情報 (ゲノム) 解析に成功した。細切れになっているゲノム情報を効率的につなぎ合わせる工夫を行ったようである。受賞理由は、ネアンデルタール人のゲノムの1部が、新人類 (ホモサピエンス) に取り込まれていること、すなわち、両者がヨーロッパで交雑したこと、旧人類にはネアンデルタール人の他にユーラシア大陸北東部にデニソワ人が居たこと、および、これらの旧人類から受け継いだ遺伝子が新型コロナウィルス感染での重症化率に関与していること、を解明したことと紹介されている。


新型コロナに対する重症化率について、アジア諸国では死亡率が低いことなど、人種間に違いがある事が知られていた。京大の山中教授はこれの原因をファクタXと呼んでいた。これの正体が突き止められたと言う事になるだろう。


 NHKの番組では、以上の受賞理由のほかにも、旧人類と新人類の遺伝情報の違いについて触れていた。新人類は旧人類のDNAの塩基の1カ所が突然変異によって変化していると言うものだった。旧人類から新人類への突然変異が脳の性能の変化につながっている事は間違いないだろう。私はこの発見がより大きな貢献だと思う。上に述べた今回の受賞理由は、ノーベル賞が重視する学問あるいは社会へのインパクトからすると、そこまで大きいようには思わない。

 新人類の脳の性能は、良い点では、旺盛な好奇心により、芸術、技術、科学、哲学などを進める原動力となったことだ。悪い点では、孤独を愛しすぎること、過度な宗教心を育てたこと、攻撃及び残虐性が生じたこと、並びに、精神病を引き起こしたことなどが考えられる。


新人類の遺伝情報の変異の部分を中心にして、これが脳の形成にどのような役割を果たしているかがわかれば、新人類の脳が引き起こしている地球上の問題を解決するための対処法が見つかるかもしれない。ただし、私は単に遺伝子操作をして人間の脳を作り変えることには賛成しない。薬などの対症療法を念頭に置いている。

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