無線基地局騒動

 

1月の日の里1丁目の定例役員会のおり、楽天モバイルの基地局建設の紹介があった。私の家のすぐ近くにある公民館(正式にはコミュニティーセンター日の里会館:従来の呼称の「日の里公民館」がずっと良い)の駐車場の端に電柱程度の塔を建てる予定である。町内会長が市有地と説明したのでオヤとは思った。市の承認は下りており、1月末から工事が始まると聞いた。翌日、家内が私に告げた。町内役員として一緒だった、基地局予定地の近くに住む方が訪ねてきて、基地局建設のことを知っているかと聞いたそうである。思い詰めた表情のようだったので、反対してほしいと思ってのことだろう。健康被害が起こるし、周りの土地の評価も下がると言ったそうだ。私が無線関係の仕事をしていたことを知ってのことだと思う。

その翌日には、町内の別の方が訪ねてきて家内が玄関先で応対した。基地局が出す電磁波が怖いと聞くが、どの程度のものかと聞いてきたようだ。カミさんは基地局は、「すでに全国にたくさん立っているので、健康被害があるのなら既に相当な数の事例があるはずだ。今のところそうでは無いようなので、そんなに心配しないでも良いだろうと主人は言っていた」と答えたそうだ。その折に置いていったのは、電磁波の怖さとそれを学ぶための勉強会の案内チラシである。九工大の物理学の名誉教授が目からウロコの解説をすると言う1文が印象に残った。近くに住むテニスの仲間からも電話がかかってきた。隣近所で基地局の怖さがいろいろ出ているので、彼の奥さんが専門家としての私に意見を聞いてくれと言ったそうだ。私は家内が先にしゃべった内容を伝えた

勉強会(土曜日)でどのような話が出るのか興味があったものの、邪魔になると思って出席しなかった。業者からの説明会が日曜日に公民館であることが、町内会の至急回覧で知らされたので、これに出席した。その顛末を書く。

楽天モバイルの担当者1名と工事請負業者の代表とその他2名が、ホールの壇上で自己紹介した。業者の代表が司会役である。30名以上はいただろうと思われる出席者は、出鼻をくじかれた。なんて事は無い、建設は取りやめると言うのだ。業者の手続きの不備が原因であったとして、全員が来場者に対して深々と長く頭を下げて謝った。業者は市役所から許可をもらう際に、住民の了解を得るようにと言われていた。そこで日の里地区の9つ(賃貸公団アパートを入れると12)の町内会の代表の集まりである、協議会に説明して了解を得たものと思っていたようだ。ただし今年の協議会の主な役員が何度も変わったので体制が十分に機能していなかったのが業者側には不運であった。協議会の役員の1人が説明会に来ており、市から許可も出ているし、健康被害の事など知らなかったので、役員会で問題とはならなかったと反省の弁を述べた。司会の業者代表は、30分ぐらいで、説明会を終りにしたいと言った。しかし、結果として1時間半以上費やした。

工事を開始するにあたり、業者は予定基地局の周りの数戸にチラシを配った。それに強く反応した方が、反対の動きに出たのが始まりのようである。出席者は、ほとんど反対意見の持ち主と思われるし、前日の勉強会で考えがまとまっていただろう。この際、楽天モバイルを含めて、業者に基地局の危険性を訴えたいのは、自然な流れである。口火を切った男性は、今回の手続きの不備を非難するとともに住民の1人でも反対する人があれば基地局は立てないと言う言質を業者からとった。また、住んでいる場所が、基地局からどの程度離れている住民の賛成を得るのかと質問をした。それは一概には言えないと答えた。当然だろう。

彼は何回か質問するとともに、参加者に対しても解説するような話しぶりであった。ある女性は、今回予定した基地局は5Gシステムなのかと聞いた。4Gだとの答えである(こんな田舎でいきなり5時はないだろう)。彼女は4Gから5Gに替える場合に、住民に説明会を開くのかと聞いた。多分、それはないだろうとの答えだ。彼女は5Gの電磁波が特別に怖いと思っている節がある。彼女はパンフレット(表紙をこのブログに載せている)を持っていたので、昨日の勉強会でもらったものだろう。説明会が終わってから、楽天モバイルの担当者が1部もらったので、私もついでにもらった次第だ。読んでみると確かに5Gを中心にして書いてある。システムの紹介としては、なかなかよく書けている。問題はそれの健康被害の実証である。パンフレットでは、被害が出る前に建設を差し止めた事例のみをいくつかあげている。この女性は電磁波被害は起きてからは取り返しがつかないとして、原子力発電事故の例を挙げた。次に質問したのは若い母親である。小さな子供がいるので随分と心配であると、これまた思い詰めた言い方である。担当者は健康被害については分からないと答えた。それでも、彼女は大野城市の小学校の運動場で子供が何人も気分が悪くなった原因として、近くにある無線基地局の電磁波が疑われたと話した。電磁波シールド金属板が検討されたと言った。次に、遅れてきた男性2人が質問した。建設中止を聞いていなかったので、その危険性をまくし立てた。次の男性はそもそも楽天の会社としての、いくつかの不始末(電磁波被害とは関係のない)を糾弾した。私は業者たちが可哀想に思った。

それで、私の田舎での基地局建設の話をした。田舎なので電波の届きにくい集落があった。それで、住民がNTTドコモに頼んで小さな基地局を立ててもらったことを紹介した。それと、「1人でも反対者があれば建設を止める」と言って良いのかと質した。担当者は、「その通りです、会社の方針です」ときっぱりと言った。

説明会が終わってから、担当者たちは質問した方たちのところに寄って、改めて謝ったり、説明を重ねていた。玄関先まで送りながらである。このときのやりとりを聞いていて、市有地に基地局を立てる許可を役所が与えたいきさつについて、私は感じた。菅総理が携帯電話代を下げさせる方法の1つとして、楽天モバイルに参入を促したのは事実だろう。そこで、国有地や市有地を使わせるように中央から地方に指示を出した可能性が高いと思う。ドコモなどの大手が料金下げを打ち出したので、今回の騒動でも分かるように、出遅れている楽天モバイルの行く末が案じられる。

電磁波による健康被害の問題は、話題にならなくなったと思っていた。今回のような騒ぎがまだ起こっているとは知らなかった。この問題の決着は難しいだろう。それにしても思い込み、信じ込みは、人間の判断を誤らせる。これは新人類が解決すべき永遠の問題かもしれない。

 

 


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