全熱交換換気システムの動作原理


中古で買った我が家を10年前(九大の定年退職のとき)に建て替えた。隣の家とその次の家の、おばあさんが、冬の寒い日に、一方はトイレで、もう一人は脱衣所で、倒れて(いわゆるヒートショック)、相次いで亡くなったのがきっかけである。建て替えてよかったとつくづく思っている。当時は珍しかった、基礎を含めて建物全体を高気密の断熱材で覆う、外断熱工法を用いている。外気温が0℃になっても、夜の暖房なしで家の中は、屋根裏も含めて、どこも15℃以下にはならない。もちろん、冷暖房の効き目も良い。

高気密の家は、強制換気が必須である。単に吸排気するのみであると、外気温の空気がそのまま入ってくるので、断熱した効果が薄れる。そのために、排気の熱と水蒸気をともに回収する、全熱交換器を床下に設置している。その効率は、80%とうたっている。最近のものは、90%ぐらいに改善されているようだ。

熱交換の原理と効率について、私が考え違いをしていたことを、最近、分かった。そこでのいきさつと、正しくは、どのように理解すべきかについて、以下に書くことにする。

仮に、外気温0℃、建物内室温20℃としよう。私は、給気温度が10℃になるのが、最高効率(100%)であると思っていた(0℃と20℃の水を同量混ぜると、温度は10℃になることからの類推である)。そこで、排出される空気の温度10℃が外気温より高いことに着目し、排気をエアコンの室外機の空気取り入れ口に吹きつければ、暖房(夏であれば冷房)効果が上がると思った。念のため、今使っている全熱交換吸排気システムの製造元であるマーベックス社に問い合わせてみた。技術者が言うには、熱交換率が100%であるということは、先の例では、室内への給気温度は20℃、排気温度は0℃ということである。これで私の目論見は無駄であることになる。先に示した、水の混合からの類推が間違いである。いろいろ考えた結果(正解が知らされているのでわりと容易)、次のように理解した。

不織布でできた長い、四角パイプ2本が、長手方向に一つの面を接してくっついているとしよう。この布は、空気(N2, O2)と水蒸気(H2O)は通すものの、建物内で発生した汚染物質CO2 などは通過できない。パイプの一つは排気、他方は給気に使われる。これらは、互いに反対方向から、空気が供給される。2本のパイプの長さ方向の各場所において、空気と水蒸気は平衡状態にあると考えられる。すなわち、空気と水蒸気の密度は、等しくなっている。これは、温度も湿度も同じであることを示す。

排気が流入するパイプの入り口付近を考えよう。先の例を考えることにする。流入する排気の温度は20℃であるから、平衡状態を仮定しているので、外気の温度は温められてほとんど、20℃になっている。湿度も同じになっている。パイプの反対側を考えてみよう。ここでは、温度、湿度ともに外気とほとんど同じである。パイプの長手方向の各場所においては、両端の状態から徐々に変化した、温度、湿度の値をとることになる。結論として、排気の温度と湿度をほとんで全て回収しながら、換気が可能となっている。

理解や説明の仕方、その他の点で疑問がある方は、ぜひお知らせください。

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