新型コロナウィルス対策

 

このウィルスが流行り始めてからだいぶ経った。私も4回目のワクチン接種を受けた。幸いにしてまだ感染していない。この間、新聞やテレビ、及び、知人たちのSNSで、様々な情報が飛び交った。これらの情報に接してきて、私はなぜかすっきりと納得することができなかった。最近、朝日新聞のウェブサイト「論座」の記事をまとめて読んでみて、納得した気になった。そのことを書く。


このウィルスの流行発生のいきさつからして、いろいろな情報が出回った。何が真実なのか戸惑いを覚えた人は、私以外にも多いだろう。感染の状況を報じた新聞記事を思い出す。ある病院での1人の感染者がトイレのドアのノブに触り、これに付着したウィルスが後で触れた人々に移り、皮膚を介して人体に侵入ものと書いてあった。

 

専門家と思われる方々が出した対策は、接触感染を重視して、くしゃみ、咳、大声などで口から出る飛沫によって感染するので、人との距離を2メートル以上離す、マスクをする、多数での飲食会話を避ける、人が接する場所ではアクリルついたてなどで遮蔽するなどの対策が推奨された。


今回、私が読んだところによれば、ウィルスは感染者の吐く息に乗って空気中へ浮遊するのが主だと言う。これを他の人が息をする時に吸い込むことで感染する。この事実は、日本での豪華客船ダイヤモンドプリンセス号での感染状況を分析して、前から論文として発表されていたそうだ。

 

この船では、感染拡大防止対策として徹底した隔離が行われた。ところが、船に送り込まれた医師などの専門家も含めて、他の乗客に広がった。それは空気中に浮遊したウィルスが空調設備の導管 (ダクト) を通って、各部屋に循環したからだというものだ。上に述べた論文は、医学界において、世界的に権威があるとされている雑誌の1つである、「ランセット」で発表されたという。日本のいわゆる専門家がこの論文に注目しなかったのは怠慢である。

 

空調設備では効率を上げるために、空気を吐き出すとともに、吸い込んで再び冷やす(温める)循環動作を行っており、空気の入れ替え量は少ない。これは各部屋に設けている通常のエアコンでも同じである。 (ちなみに、建て替えた我が家は強力な機械式全熱交換システムを導入しているので、部屋の汚れた空気はかなりの量で外に排出され、新鮮な空気と入れ替わっている)。感染経路がこのようなものであるなら、換気こそが最も重要であるはずだ。先に示した医学雑誌にこの論文が発表されたものの、日本では、専門家が読まなかったのか無視したのか、感染防止策として換気の重要性が指摘されるようになったのはだいぶ後のことである。


私が次に読んで知った事は、PCR検査についてである。当初はPCR検査の重要性はさほど言われていなかった。その根拠は検査が完全ではないと言うものだった。検査における誤りには2種類ある。一つは陰性であるにもかかわらず、陽性と判断する誤り(偽陽性)である。もう一つは陽性患者を見逃す誤りである。これらの誤り確率がそこそこ高いので、全数検査しても、正しい識別確率が下がり、大して効果が出ないと言うものである。今回読んだ専門家の記事は、偽陽性を出す確率は、限りなくゼロであることが、専門家の間では当たり前になっていると言うものだ。もし、訓練を受けた人が間違うとしたら、病院での手違いで赤ん坊を取り間違えてしまう位しかないと言うものである。

 

全員のPCR検査を行い、感染者が確認するのが基本中の基本であることになる。なぜこのような対策が行われなかったかについても書かれている。保健所の体制が追いつかないからだそうだ。しかも法律制度上、保健所しか検査する判断を任されていないようだ。記事を書いた専門家によれば、インフルエンザなどに対するように、病院の判断で出来るように指令を出せば、もっと有効に対策ができたはずのようだ。

 

保健所の方々は、それこそ大変な目に遭いながら奮闘した。組織トップが出す方針がまずければ、シワ寄せは全て現場の人々に行く。それは旧日本軍のみならず、すべての組織に共通である。日本の医療体制、特に全国民が健康保険に入っているのは、世界的に見ても優れたシステムである。しかし、今回のコロナウィルスに対しては、その体制の機動力、すなわち、首相を始めとする組織トップの危機対処能力が問われたのである。そのためには、専門家の力量も問題となる。厚生省の医官も含め、今回の対策を審議した人たちは現場経験が少なく、適切な対応を提示できなかったとしている。アメリカなどでは、専門家が実際に診療もしていて現場を熟知している人であり、会見などでは聴診器を首にぶら下げて行っていることが多いそうだ。

 

今回のコロナ対策で、日本は世界的にみて、よく行った方だと言う意見もある。しかし、アジア諸国では、日本よりはるかにうまくいった国がある。京都大学の山中伸弥教授はアジアでの死亡率が低いのは何かの原因 (ファクターX) があるのだろうと言った。都道府県の中で最も成績が悪かったのは大阪府だ。人口あたりの死亡率は全国平均の2倍と悪い。その原因は、「維新の会」の行政改革で保健所の要員をバッサリ切ってしまったからだそうだ。それでも国民の多数は、大阪府の吉村知事はよく頑張っていたと思っている節がある。これは、彼がテレビなどのメディアに頻繁に登場して、「やってる感」を見せる、最近、お馴染みの風景によるものだろう。

 

その他にも、ワクチン製造に対する国の補助金の注ぎ込みも、国力からしたら、きわめて低いと指摘されている。

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