太陽熱温水器の製作



 

昨日、これが完成した。途中中断も含めて、2ヶ月ぐらいはかかった。完成を祝って、晩飯晩酌をいつもより贅沢にしようかと言うカミさんの提案は断った。その理由は最後に書く。


太陽熱温水器を作ろうと思い立ったのは、電気代が高くなったと感じていたのが一因だ。我が家はオール電化とはいえ、電気代が1月に12 3千円かかる。以前は1万円を切ることもあったと記憶している。請求書の内訳をネットで調べると、再生エネルギー調整金が2千円以上かかっているのが、前よりも高くなっている理由の主なものだ。内訳の半分ぐらいは、風呂に使用する深夜電力温水器の使用部分である。太陽熱温水器を使えばこの分安くなる。ネットで調べると、太陽エネルギー変換効率は、発電では15%位に対して温水器では40%とある。どちらを採用するとしても、費用対効果(電気代節約)を考えなければならない。調べてみると、どちらも本格的なものにすると、思ったほどの効果は出ない。

 

これが抜群のものを見つけた。黒色ビニール袋を用いたシャワー温水器である。中国製で容量200リットルのものが4300円で買える。これを注文して屋根に置いてみた。秋の終わりごろで、水温は35度位まで上がった。ただし、屋根の傾斜に沿ってこの水袋を設置するのは不安定である。さらに水(井戸水)を送り込んだとき、水栓を閉めるのを忘れてしまって、袋がやぶけてしまった。もう一つ注文して、今度は洗濯干し場を兼ねたベランダに置いた。水平なので、太陽熱の利用効率は低下するはずであるが、しかし、30℃位には十分に上がった。問題は同じ高さの水を風呂へ送ることである。ネットで調べて、12V(20W)直流ブラシレスポンプが、安くてあったのでこれを購入した。9mm直径のホースを台所の床に這わせて使った。25分位で入れ終わる。途中で、3歳の孫娘が来て、風呂に入れる水を触って喜んでいた。「お日さまがあっためてくれたんだー」と言いながら。この方式は、結局カミさんに却下された。何回か使っても、ビニール袋の匂いが水に混じっており、風呂に入る気がしないと言う。何せ彼女の嗅覚は、私に言わせれば犬に負けない位だ。逆に私は鼻づまりで極めて鈍い。


あきらめ切れないでネットを検索していたら、YouTubeで塩ビパイプを使った温水器の製作を紹介しているものが見つかった。塩ビパイプに黒色塗料を塗ってやれば、そこそこの温水が得られている。その効果を上げるために木枠の中に入れて、これを園芸ハウス用ビニールでおおっているので、気温を高く保たれる。私はこれを次のように改善した。


1.
屋根の上ではなく軒下に設置する。水の搬送は先に買ったポンプを利用する。


2.
パイプを逆T字型に接続するのを変えて、上下対象にはしご形にする。 パイプが長く(133cm)、立てかけの傾斜角が垂直に近い(10度くらい)ので、温度差が出て熱効率が落ちる。これを改善するために、先のポンプを利用して水を循環させる構造にした。


3. 
太陽光の収集を良くするために、パイプの後ろ側に断熱を兼ねたアルミ箔接着シートを設置する。写真は製作途中のものである。肉厚が薄い塩ビ管(直径10 cm)で、長さが4 mのものを2本用意した。容量計算により、133 cm5本使うことにした。これらを接続するために、直径5 cmのパイプと、インクリサー (直径5 cm10 cmのパイプ接続部品)3方向継手チーズ (Tees) を用意する。また、パイプの終端に水栓金具を取り付ける。温水循環を円滑に行うために、平行四辺形の下方隅から吸い込んで、上の対角隅から注入している。ペンキはビニール製品のものを用いる。これら材料は全て通販サイトMonotaroで買った。


私の構造は、頭で考えた以上に、製作に注意が必要である。組み立ては専用の接着剤を塗って2つを押し込む。手初めに 50 cmのパイプ部品を組み立てて練習した。接着剤の乾燥がわりと速く、最後まで押し込むことができなかった。近くの水道設備店に相談しに行った。接着剤をたっぷり塗って、一気に押し込むことがコツだそうだ。最後まで入らないと強度が落ちる。下手したら水漏れが生じる。組み立ての順序も大事だ。それ以上に、切り出すパイプの長さをそろえることと、直角に切ることが重要である。この手の考え事はこれまでの職業柄慣れているし、好きである。夜中に飛び起きて問題解決のアイデアをメモしたり、調べたことが何度もある。私が手を止めて立ったまま考え込んでいるとカミさんが冷やかす。「下手な考え休みに似たり」と。


パイプを直角に切る方法に悩んでいた。直角を取るために、重りをつけた糸と、水平を取るために水準器 (水の中に空気泡がある)を使いながら、試してみたけどうまくいかない。例によってネットで検索したらYouTubeで紹介されていた。1つは直角がしっかりと出ているA4などの紙をパイプに巻きつけて、切断線の印を付けるものである。なるほどこれは良い。さらに良い方法は、買ってきたパイプ(先端の直角度が出ている)10 cm位に切って、これを縦に切って、パイプの外側にはめ込み、切断線を描く方法である。私はこれを使った。

 

10 cmのパイプの接続は苦労することが予想された。接着剤は乾くのが遅いものがあることを知ってこれを用意した。押し込む力も相当必要であるから、車のジャッキを使うことを考え着いた。横にして、パイプの一方をベランダの柱に、ジャッキを大きな庭石に当てる。木材を足して長さを調節し、接着剤を塗ったらジャッキを伸ばして押し込んだ。1人ではできなかったので、カミさんに手伝ってもらった。この時わかったのは、押し込むときの平行度がかなり重要であることだ。少し位傾いても、滑って入ってくれると思ったけれどそうではなかった。5つの大きな部品を組み立ててから、1つに組み込む作業は、女手の応援では無理だったので、テニスの仲間に頼んだ。2人でタイミングを合わせて差し込んで行ったものの、私の不手際で少し角度が出てしまい、最後まで押し込むことができなかったところが1カ所あった。そのため長方形の平面が崩れ、軒下に立てかけた時、左右が揃わないことになってしまった。幸い水漏れは生じなかった。


パイプを切ってしまってから、横方向に設置すべきではなかったかと思ったことがある。その利点は、壁に立てかけたとき、傾斜を取る必要がないことだ。縦に使うと、夏と冬の太陽の角度の違いによって日照効率が変わる。しかし、これには利点もある。1日の時刻による太陽光線角度の東西方向への変化に影響を受けない。また水を注入した場合の、重さに対する対処も楽である。


太陽の角度は、宗像市の緯度33度と地軸の傾き23°度から計算できる。夏至で90− 33+23= 80°、冬至で90− 33− 23 = 34°(水平方向= 0°)である。温水器の壁に対する角度は10°しかとっていないので、冬至における太陽の南中角度は、パイプに対する直角方向から24°ずれる。この分により効率は、cos(24°) = 0.91倍に下がる。これくらいなら許せるだろう。

 

ペンキを塗り、水の出入り口とポンプを取り付けて、水漏れと温水効果を確認した。その後、木枠とアルミ反射材を取り付け、晴れた日に4時間ほど稼働させてから、風呂に入れてみた。ポンプの音が高くなるので温水を全て出し終わったことがわかる。風呂の水を見に行って驚いた。水が目標の半分にも満ちていない。ポンプホースの取り替え作業に水漏れがあったけれども、それほど大量ではなかった。仕方がないので電気温水器の風呂給湯のスイッチを押して入浴状態にしてから風呂に入った(全自動なので水位と温度は自動で調整してくれる)

 

風呂から上がって、食卓についてカミさんに聞かれた。「あなたの計算は大丈夫だったのだろうね」。「風呂の中で暗算で計算したけど間違っていなかった」と答えた。続いて、「円柱パイプの容量の計算は、お前も知っているだろ。パイアール2乗かけるの」と言ったところで、私は絶句した。アールに半径5cmを使うところを、パイプの直径10cmを代入して設計していたのである。容量は目標の4分の1になるのが正しい計算だったのである。最後の最後までこの間違いに気がつかなかった。歳のせいにはしたくはない。その後のビニール囲いの工事に、気合が入るわけはない。ともかく完成はさせた。お粗末な話のおしまいおしまい。

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