老人のゴルフ
ゴルフを始めたのは40歳位のときであった。会社にいて、研究所から移動通信事業部へ異動となったころだ。先に異動していた、研究所での上司と一緒に、通産省の財団から頼まれて調査報告書を書いた。その報酬が25万円ほど入った。上司が言うには、事業部ではゴルフが盛んで課長以上の管理職がほとんど参加しているので、私も始めろとのことだ。先の報酬は全部私が使って (報告書のほとんどは私が1人で書き、上司は少し手を入れたのみ) ゴルフ道具セットを買えと言われた。そして、練習も始めた。コースに出るのは年に2, 3回であったろう。職場でのゴルフの常で、若い連中は、朝早く暗いうちに起きて、年上の2、3人を家に迎えに行き、帰りに送った後、暗くなるころ自宅に戻る。ゴルフ場はずいぶん遠くにあった。それでもゴルフの費用はかなり高かったと、カミさんが今でも時折、口にする。当時、月いちゴルフと言う言葉を知った。毎月1回はゴルフをすると言う贅沢なことかと思っていたら、月に1度しかできないと言う意味だったと後で知った。
大学に移って、どこからか声がかかってきた。ゴルフをやる教授達をある会社が接待して招待する習慣が、前から続いていたようだ。ハイヤーが自宅に迎えに来て、終わったらお土産付きの懇親会がある。大学のOB、会社の上層部との顔つなぎの目的であったのだろう。ゴルフ場も最高クラスのものを使う。さすがに、途中から大学側も会費を出すようになった。それもあって、大学で開かれる競技会にも参加するようになり、仲間が多いゴルフ場の会員になることを勧められた。バブル崩壊の後であったので、会員権料は下がっていたけれども、今の相場の3倍程度は高かった。会員になったので俄然熱心になり、練習場には週に2度は行った。腕が上がってきてゴルフ場の毎月の例会に出て、C組 (ハンデ20以上)では何度も優勝した。今ではB組である。ちなみにベストスコアは79である。
練習場は車で5分位のところにある。年会費を3千円出すと、1時間900円で打ち放題である。距離はネットの中段で230ヤードと表示している。これにアプローチ練習場が付いており、2時間は無料である。最近は、行くたびに合計3時間はたっぷり遊んでいる。練習場のコンペ (レディースシニア) が年に8回あり、毎回、30組位の規模である。新人は支配人と一緒に廻らせてもらえる。彼はアメリカでプレイしていたプロであった。指導も上手である。その他にも練習場仲間のコンペが3つある。 私は宗像市に住んでいる。だいぶ田舎であるけど、博多駅から電車で30分ぐらいだからそんなに不便ではない。自宅から車で30分以内のところに、6つのゴルフ場がある。私の所属するところは15分で行ける。会社に入って寮の仲間と始めたテニスは、今でも続けている。日の里GTC(グリーンテニスクラブ)と言う同好会に入っている。近くの市営テニスコート3面をほぼ占有して使っている。少し前から、70歳以上の老人の割合が3分の2になると、コート使用料が無料になった。それで月1千円の会費で、いつでも遊べて、ボールも使い放題である。ただし、自治組織であるので会員の半数弱は何らかの役を受け持っている。このテニスクラブでもゴルフが盛んであり、日の里GTCは、ゴルフテニスクラブとも呼ばれる。
前置きが随分と長くなった。書きたいのは、私がもうすぐ76歳になるので、最近の老人としてのゴルフについてである。亡くなった方やゴルフをやめた方もあるとはいえ、まだまだ、続けている人たちが多い。歳をとると、気が短くなり怒りっぽくなる。体力も衰え、ゴルフのスコアも当然に悪くなる。テニスがうまい同年代の男が言うには、70歳以上になって、これまで楽しく付き合っていた仲間と些細なことで喧嘩になり、それ以降付き合わなくなってしまう事例が多くあるそうだ。私も、練習場仲間の小さなコンペで、何度か経験したことがある。バッティングの際のボールの置き方について、一人が何か注意した。注意された男が怒りだし、「もうお前たちとは一緒には回らないと」言い出した。何が問題での注意だったのかは分からない。あるときは、パットグリーンを越えて打った男が戻そうとして、打った球が右45度位の方向に飛び出し、仲間の脛に直接強く当ててしまった。謝り方が悪いと言って喧嘩になった。ティーショットを打とうとしていた男が、いきなり大声で怒鳴った。「お前たちうるさい、黙ってろ、お前たちはマナーがなっていない」。私も含めて後ろの方で話をしていたのは悪かった。しかし、もう少し言い方を柔らかくはできないものか。大学勤務でのゴルフの仲間で、昔は私よりはるかに上手だった男が、散々失敗ばかり続けるので、私がスイングのおかしいところを忠告したら、「うるさい、黙ってろ」と言われたこともある。まだある。「赤岩さんスコアを少なく告げた」と言われたことがある。私は一瞬、自分の非を認めそうになった。別の男が私は正しいと言ってくれた。私に注意した男は、私の2打目が隣のグリーンの側に落ちたと言ったけど、それは彼の思い違いで、その前のホールでの事だったのだ。
同じゴルフ場の会員の1人 (私の1つ年上、テニス仲間でもある)と握って勝負するように、最近、なった。2人で廻るのは寂しいので、テニス仲間で同じ位の腕前で年齢が近い2人を誘ってコンペ形式で行った。つい、先日のことだ。コロナのせいで、ゴルフ場のレストランで酒が出せなくなったので、全員、弁当と酒 (2人)を、屋外の風通しの良い池の端の木陰で、ピクニック気分で楽しんだ。その前の日、福岡県の「まん防条例」が停止になったので、久しぶりにゴルフの後の飲み会をやろうと私が言い出し、近くの天然温泉の食堂に行った。4時過ぎから営業しているところは少ないのでここにした。久しぶりの飲み会で皆盛り上がっているところに、従業員が来て大声を出すなと注意された。私は、4人ともワクチンを2度打ち終わっているから写す心配もないので、あまりうるさく言うなと口答えをした。2度目の注意が来た。見渡すと広い食堂に我々の他には、遠くの隅に1組いただけでだった。この点を指摘して私は反抗した。おまけに、「この部屋の換気は十分にできているのかと」 口答えもしてしまった。この時にきたのは、食堂の支配人であったようだ。私は腹いせに、帰る際に彼の名前をもう一度聞いた。彼は平然として。「またお待ちしています」と答えた。75歳以上の年寄りの悪さを出してしまったことを、今はいくらか後悔している。それにしてもコロナが早くおさまっててほしい。前のように、テニス、ゴルフを終えた後で、仕事もないので、明るいうちから大声を出して酒を楽しみたい。先が短い老人の一人として。
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