ナマコの話

 

本格的な冬になってナマコが出始めた。つい先日、私が見たのは青ナマコで、値段は100g当たり380円とあった。かなり高い。赤ナマコであれば、例年、その1.5倍はする。神奈川県に住んでいた時は、これと逆で青が赤より高かった。青の方が柔らかいからだと思う。九州に戻ってみると、これが反対になる。赤の方が日持ちがいいせいだろうか。だいぶ前に、五島の実家に真冬に帰ったとき、岸壁で長い矛を持ってナマコを探している男がいた。冬の海はプランクトンが少ないので、澄んでおり海底までよく見える。私はかなり大きなナマコを見つけたので、その人に、「あれはナマコだろ」と言ったら、事も無げに「青ナマコ」だと答え、気にしない。私は彼に頼んで突いてもらい、持ち帰って食べた。まずいわけはない。

 

ナマコは体に良いと言われている。飛行機の中で読んだ雑誌の記事に、中国の大連の海辺の町のナマコについて書いてあった。時期になると、毎日、1月ぐらい続けて、月給の半分(?)の金をかけて食べる習慣があるそうだ。次は、私の地元、五島の親戚の男に聞いた話である。彼の親戚筋に当たり、私の五島の中学時代の同級生である女性に、冬には大量のナマコを送っているという。彼女が癌にかかっていることは、2年ごとに行われていた中学の同窓会で聞いていた。ナマコは癌に効くという考えがあるので彼女が頼んできたようだ。実際、彼女はその癌が小さくなったと話したそうだ。その後の同窓会で会ったら、きわめて元気そうであった。ところで、私も何年か前に前立腺癌と診断された。ただし、治療は当分、必要がなく、経過観察になった。私もこの親戚に頼んで、ナマコを大量に送ってもらった。テニスの後の飲み席に持っていくと、皆が喜んでくれる。冷凍しておいて、小出しに毎日、1月は食べた。最初の癌診断がおりてから、2年経って再び生検を受けたところ、癌は見つからなかった。今のところ、血液のPSA検査のみで経過観察となっている。 ナマコが効いたのかどうかは分からない。 年の瀬になって、年賀状の欠礼挨拶の葉書が、先の女性の夫から届き、この11月に亡くなったことを知った。彼女は発病してから10年は経っていたと思う。

 

ナマコを干したものはホシコと呼ぶそうだ。ホシは干しであろうから、本当は、干しナマコというべきだろう。生のナマコは、生ナマコだろう。気になって調べてみると、「コ」だけで足りる呼び名だそうだ。「生コ」と「干しコ」であるから妥当な言葉使いである。ホシコは干し鮑と並んで、江戸時代に長崎から俵物として中国へ輸出されていた。五島はその有名な産地である。岡本隆司の本によれば、当時の中国への輸出品は、もともと銀であった。その銀が掘り尽くされたので、代替品となったというわけだ。

 

干しナマコも干し鮑も、中華料理で味合うとまた格別である。ところが最近は値段が高騰しており、店で注文するときには、随分と勇気がいる。暴力団が資金集めのために密漁で乱獲して、少なくなったとも聞く。中国の人々が金持ちになったので、高く買い上げているとも考えられる。

コメント

  1. 全文読んで居ませんが、ナマコは大好きです。確か酢醤油に切り身のナマコをサッと漬けて食べるのですね?コリコリして本当に見た目と違って美味しい記憶があります

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