二度目のヒラマサ釣り

コロナウイルス禍のために、控えていた、五島の実家行きを、10月下旬、今年、初めて決行した。ニュースを観ていたら、Go To 五島キャンペーンで、福江空港が出たので、その気になった次第だ。台風の被害(瓦が何枚か飛ばされ、マキ兼用風呂釜の煙突が折れた)の検分を言い訳にした。主目的は、弟を誘っての船釣りである。近所に土産を持って行くと、「お前たちはいいときに来た」と言われた。今まで20間ほどは海が荒れて船は出せなかったそうだ。低気圧が西から近づいているので、これから数日間は凪が続くとの予想である。

 

 船を降ろして早速、問題が起きた。エンジンが一度はかかったものの、すぐに止まってしまう。何度か試すもののダメだ。昨年、中古の小型予備エンジンを買って取り付けていたので助かった。これを使って、船の係留場所まで移動できた。いつも親切に対応してくれるエンジン屋に電話するとすぐに駆けつけ、診てくれた。原因は、空気が燃料供給系のどこからか入っているためである。燃料フィルタタンクが透明になっており、確かめられる。これは、ディーゼルエンジンにとって致命傷である。疑わしい部品を交換するために手配をしてくれたものの、届くまで、2日間はかかる。弟は翌朝に着いいて、2晩泊まって帰らなくてはならない。私が、昨年、ヒラマサを3匹釣ったのを自慢していたので、これにつられて、京都から来ることになっている。私は困った。島でずっと漁師をしている同級生が船外機付きの小型ボートも持っていいることを思い出した。漁に出ているところに、ケータイで頼んだところ、快く貸してくれた。

 

 弟が来た翌日の朝早く船を出して、20分ほどして釣り場に着いた。仕掛けは、昨年、実績のある、スロージギング (slow jigging) 仕掛けである。釣れた場所は、だいたい頭に入っておるうえに、魚群探知機に記憶させている。この釣りは、イワシなどに似せた、鉛でできた偽の魚を、動かしながら、特に、弱った魚を演じさせて誘う。底付近からずっと誘い続けるので、腕がかなりしんどい。速い動作を行う(fast pitch)よりも楽とはいえ、当たりもない仕掛けをひたすら動かし続けるのは虚しくなることがある。私は、そのうち当たりが来ると思っているので我慢できる。弟は辛抱できない。だいたい、金属でできた偽の魚にヒラスが食いつくとは、経験した者でないと信じられないだろう。「俺は止める。アラカブ(カサゴ)釣りに変えてくれ」と言う。弟も使って実績のあるタイラバ仕掛け(これも色付きゴム製の疑似餌)を別に用意していたので、これで釣り始めたら、早速、大きなカサゴがきた。その後は、カタの良いオオモンハタ(地元ではモアラと呼ぶ)と、2キログラムはある立派な鯛がきた。弟にとって今まで一番の引きであったとえらく喜んでいた。私は、ヒラマサの引きはこんなもんではないと言った。私の感じでは、秋から冬に向けて、魚の引く力が強くなる。寒い冬に向けて体力をつけているからだろう。私は、意地でヒラマサを狙うものの、この日は、結局ボウズだった。

 

 その次の朝は、弟が帰るので船は出さなかった。漁協の購買部でカンパチをサクで(えらく高い)、弟の同級生で養殖をしている男から、アオリイカ(地元ではミズイカ)2ハイと、また、馴染みのタコ漁師からタコ6ハイと3.7キロあった生きたアラ(クエ)を調達していたので、魚は十分にあった。弟が帰った翌日から海が荒れたので、船を出せない。奈留島(実家)には16日間居たものの、釣りに出たのは、合計3日間である。そのうちの1日の釣果を写真に上げている。注目して欲しいのは、赤い色の棒状の魚である。地元ではヤガラと呼ぶ。ネットで調べると、旨い魚で高級料亭向きのようだ。私が目にしたのは、これで3度目である。最初は、何年も前に、神戸から帰省していた男を私の船に乗せたとき、彼が釣り、糸を巻き上げすぎて、魚が私が貸していた竿に巻きつき竿の先端を折ったときである。2度目は、私のタイラバにかかり、船に引き寄せようとしたとき、船ベリに体当たりして、針を外して逃げられたときである。従って、これは私が最初にものにした魚であり、それまで2度見たものよりはるかにでかい(長い:計ると110cmを超えていた)。隣家にくれた、大きなフエフキダイと、アカハタそれに、タモで掬おうとして逃げられた大きな鯛は写っていない。逃げた鯛は弟が釣ったのよりだいぶ大きかった。地元でのことわざを紹介しておこう。「逃げたイオ(魚)は太かイオ、死んだ子は良か子」。

 

 先に書いたヤガラは、空しくジギングをしているときに、娘からケータイにメールが届き、これを返事を打っている際に当たりがあった。竿を股に挟んでケータイを手にしていたので、慌てて合わせを入れたらかかった。今までに経験したことがないような妙な引きである。途中から大人しくなって、大きな藻がかかっている感じだ。近くになり、ヤガラとわかったら、暴れ始めた。慎重にタモに入れようとした。しかし相手は長い。タモの直径をはるかに超えてはみ出している。そうこうしているうちに針が外れてしまった。逃げられると思った。幸いに(魚にとっては不幸に)、30cm はあるクチバシが、シリコンゴム製の網の目に入り込んで抜けなくなっていた。

 

 ヒラマサはどうだったかというと、実は今年はダメだった。

 



コメント

このブログの人気の投稿

数学論文投稿 (電子情報通信学会 9度目の拒絶と10回目の投稿)

日本数学会への論文投稿(続き)

数学論文投稿(電子情報通信学会 8度目の拒絶と9度目の投稿)