ウイルスと人の生き延び方


人は子を作ることにより生き延びてきた。新人類は(ヒト)20万年前ぐらいに突然変異で (D. Horrobin , ”The Madness of Adam and Eve”)誕生したと言われている。ヒトの1世代の生殖年数を30年とすれば、現在まで、約7000世代目である。ヒトがこれほど長く生き延びてこれたのは、親から子へ遺伝子を次々と伝えたからである。遺伝子の構造はかなり解明されている。簡単に言えば、たんぱく質を作るための塩基が並んだ物質である。

この生き延び過程について、R. ドーキンスは、著書「利己的な遺伝子」において、物質に過ぎない遺伝子が利己的に生き延びようとしていると主張している。我々人間は単なる宿主、比喩的に言えば遺伝子が生き延びるための1代限りで捨てられる乗り物に過ぎないという。確かに、我々は数10年間しか生きられず、必ず死ぬ運命にある。

他の動物と違って、ヒトは本能が壊れてしまったので、生きていくためには、脳の中で本能に代わる行動基準を作らざるを得ないと、心理学者、岸田秀は言う。ただし、それはいわば幻想であり、動物の本能のようには、事態にスムースに対処できないと、彼は主張する。そのため、ヒトは思い悩んだり、イライラしたり、攻撃的になったりする。彼は、フロイト心理学を基にして、新人類の心理構造の本質をトコトン自分の頭で理論(哲学)的に考えてこの結論に達した。彼は、本能がいつなぜ壊れたのかは、説得的には説明していない。私は、先に挙げた、D. Horrrobinが示した、新人類の誕生の際の突然変異に起源があると思う。

我々は利己的な遺伝子の単なる運び屋に過ぎないと、腹をくくれば、人として生きて行くのに、それほど苦しむ必要はないだろう。利己的な遺伝子を生き延びらせるために、宿主である各人がそんなにムキになる必要はないと思う。

さて、現在、話題になっているウイルスは、自己再生できないので、他の生物を宿主として、遺伝子を増殖させてもらっている。ヒトはオスとメスの遺伝子が必要であるとはいえ、自己増殖できる。ただし、遺伝子が生き延びるためには、宿主を必要とする点では、ウイルスと同じである。ウイルスが、宿主であるヒトに侵入してくると、特に若者では気がつかないこともあるとはいえ、感染症状で身体に悪影響が出ることが多い。場合によっては、特に老人では死ぬこともあるので、問題になっている。

ヒトの遺伝子が再生して生き延びるための宿主は、メスである。オスの精子を受け入れるのは、その遺伝子に感染するということであると言えなくもない。その際、直ちに身体に悪影響はでない。かえって心地よく感じることがある。ただし、後に、つわりなどの辛い症状が現れることがある事実は、ヒトがウイルスに感染した際の異物に対する免疫現象と同じと理解できる。

この世の物質は、ヒトも含めた全ての生物、あるいは、非生物を問わず、ビッグバンから始まる宇宙創世によって生まれた。地球誕生の際には、生物は存在していなかった。生物の誕生は、たんぱく質が偶然に作られたことから始まる。それが幾多の偶然により、現在の無数の生物種に分岐して生き延びてきた。ウイルスは、生物と非生物の中間の状態にあると言われており、生物としては原始的な部類であろう。それでもここまで生き延びている。

私の悪い癖で、大ぶろしきを広げてしまった。

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