濡れ縁の自作




11年前に自宅を建て替えた折に、中庭に面して一緒に作ってもらっていた濡れ縁がだいぶ前からかなり傷んでいた。(何年か前に、私がペンキを塗り直したときに、塗料の選択を間違えていたことも傷みを早くしたようだ。材木に浸透するタイプを使う代わりに、皮膜を作る塗料を使っていた)。自分の手に負えるようには思えなかったので、市の商工会の窓口に相談して、工務店を紹介してもらった。長持ちするという材料ということで、サイプレス(豪州ヒノキ)を使って、13万円の見積もりが出た。材料が高いので、普通の板のような形状である。そのため、仕上がりはウッドデッキ風になる。これまでのものは、ヒノキの角棒(9cm x 4.5cm を縦に使っており、これに比べると見栄えがだいぶ劣る。そこで、自分で作ることを念頭に置いて、近くの材木屋に相談に行った。

店員が親切に助言してくれた。彼は、価格の点でも、耐久性の点でも、杉の赤身材を薦めた。耐久性の証拠として、30年くらい野晒しにした、赤身杉、サイプレス、ヒノキの角材を見せてくれた。名前を挙げた順で、痛み具合が少ない。赤身は脂分が多いので腐りにくいとのことである。材料費を見積もってもらうと3万円ほどだったので、自分でやることに決めた。コロナウイルスで自宅にこもっていることも、この決断を後押しした。

今の造作のうち、表の角棒のみを取り替えれば済むとふんでいた。角棒を止めているビス(木ネジ、仏語)などは見えないので、土台にどのように取り付けているかを調べた。よく見ると、厚くない板材を使い、そちら側から、角材をビスで留めているようだ。その後これを裏返して、土台に乗せている。土台に固定するために、角材の隙間のところどころで、ビスを使って板の上から留めている。なるほどよく考えていると感心する。

解体に取りかかって難儀した。延長ネジまわしをつけた電気ドリルでビスを抜こうとすると、錆びているので、すぐに頭の溝が潰れるか、ビス本体がねじり切れてしまった。結局、ビスの両側で板材をノコで切って、ブロックごとに取り外した。上手に切れないので、土台までかなり切り込んでしまった。土台が現れてみてがっくりした。土台までが相当に腐っているのだ。ひどいところは、中心部の固い芯を残して、周りがふかふかの状態である。この原因は、板材の幅が土台の幅よりもずっと狭いことである。雨水が直接土台に当たり、ここに溜まった水が長い間、抜けなかったようだ。その他にも、防腐ペンキが塗られていないところがかなり劣化している。おそらく作りつけてから、ペンキを塗ったために、手が入らないところが塗り残しになったと思われる。

結局は、土台も全て取り替えることにした。杉の赤身の柱(10.5cm角、長さ3m) 2本、6千円で買い足した。土台を支えている柱をどうするか悩んだ。大工さんが作ってくれていたものは、家の床の土台材木をあちこちで支えるためのツカ()を使っている。見えない奥の部分は鉄製のもの、表側には黒いプラスチック製のものである。表側のツカは灰色の塩ビの筒に入れられており、当初から見栄えに不満を持っていた。そこで、柱も、土台と同じものを使うことにした。この時、気がかりだったのは、柱を一旦切ってしまうと、高さの調整は、柱を乗せる基礎(塚石)の高さで行うしかないことである。そのために肝要なことは、基礎石の高さと柱の長さをできるだけ揃えることである。さらに、柱を切り出すときには、水平、垂直方向の直角度を正確に出さなければならない。持っているノコでやるには、これまでの経験からして無理である。


そこで、電動丸ノコを買うことで家内を説得した。殺し文句は、「工務店に頼んだらいくらになると思う」である。実は、4mの角材を買ったおり、長さを90.5cmに揃えるために、材木屋で電動丸ノコを借りて、家内に助けてもらって切ったのである。垂直面の直角度は、丸ノコの取り付けアルミ台でとれるし、水平面の直角度は、三角定規みたいな道具があった。

材木屋の店員は、我々、年寄夫婦が電動丸ノコで怪我をするのではないかとずいぶん心配してくれた。当て木を用意してくれ、使い方を丁寧に説明してくれた。それでも、1回切り終わる時に木材が傾いて、ノコの回転歯が挟まり、ノコが急に弾かれる現象が何度か起きた。折しも、その店員は左手の指2本に包帯を巻いていた。別の機材で木材加工しているときに怪我をしたそうである。家内が心配するのも無理はない。

私は、道具類を買うときには、徹底して調べるのが好きである。丸ノコを買うと決めて、家内の友人の主人が経営する金物屋に相談した。いつも親切に対応してくれる。私の目的を聞いた上で、プロ用の(マキタ、日立工機、リョービなど)ものは、かなり高いので、ホームセンターで見てみて、1万円くらいなら使い捨てのつもりで買っても良いと言った。近くのホームセンターに行き聞いてみた。マキタのDIY用型番のものが13千円ぐらいだった。プロ用との性能の差はそれほどでもない、修理もできると言う。それでも、決心できずに、ネットでいろいろ調べた。結局、マキタの同じものが1万円くらいで買えることがわかり、アマゾンで注文した。

話を元にもどそう。今のものは、ツカ8本のうち、6本を家の基礎の張り出し部分に立てている。この部分には、プラスチック系の断熱材が入っている。薄いモルタルが塗られているのみであるから、強度の点で不安がある。そこで、ツカ石6個を買い足して、土の部分に据え付けることにした。高さを揃える方法として、透明ビニールパイプに水を入れて、一端はバケツに入れと、他の端の水面の高さはどこの場所でも同じになる現象を用いることを知っていた。ただし、ツカ石の高さを調整することは難しい。束石の下には、補強のために砂利石を敷いて、搗き固めている。テニスクラブの仲間で、元国鉄のトンネル工事に関わっていた男に、助けを求めた。彼は高さ調整に砂を使うことを教えてくれた。さらに、8個の束石の据え付け調整まで手伝ってくれた。

今回の工事での改良点は以下のようになる。

1. 土台の木材の腐れを防ぐために、角材を取り付けた板の幅を土台の幅より広くして、土台のための傘の役割をさせる。さらに、この板の幅の両端に水切り用の薄い長い板を打ち付け、雨水が土台に伝ってくるのを防いだ。
2. 防腐用のペンキ塗りは、部材のときに行う。また、角材と板で、雨が直接当たる面はいったんバーナーで焼いてから塗装した。さらに、塗料は、材木に染み込むタイプとした。
3. 名年後かの修繕が楽になるように、ビスは全てサビに強いステンレス製にした。
4. 角材を板にビス留めしたのちに裏返す必要がある。これを楽にするために、2つに分割した。それでも、家内と二人でてこずった。3分割にすべきだった。

結局のところ電動丸ノコはさほど活躍しなかった。柱を材木で作ることを諦めたからである。写真のように今まで使っていたツカ柱を流用した。ネジ構造で高さを調節できたので、据え付けも、その後の水平出し(水準器を使った)、も随分と楽であった。塩ビパイプを除いたので、見栄えも悪くないと思っている。材料費は、総額で5万円ほどになると家内が計算してくれた。そして、私は電動丸ノコを手に入れた。

コメント

このブログの人気の投稿

数学論文投稿 (電子情報通信学会 9度目の拒絶と10回目の投稿)

日本数学会への論文投稿(続き)

数学論文投稿(電子情報通信学会 8度目の拒絶と9度目の投稿)