石川 さゆり -- ウイスキーはお好きでしょ --


12月の中旬に、誰も住んでいない五島の実家に一人で10日間ほど行った。土地境界の確定の事情聴取ために、相続人の一人として、法務局から呼び出しがかかっていたからである。ついでに、今年の秋に覚えたジギングによるヒラマサ釣りを行うことにした。魚干し場の新調や陸揚げしている釣り船の手入れなどの用事もあり、かなり忙しい日が続いた。

ある日、珍しく晩飯が早く終わったので、ウイスキーを飲んでいて、ふと思い出して、2階に置いてあるオーディオ装置で音楽を聴くことにした。九大を定年退職してから、東京の電通大で特任教授として働くために単身生活をしていたおり、買い揃えていた小型装置である。私のこだわりで、そこそこの音質である(宗像市の自宅には、総額で車一台は十分に買える金をつぎ込んだ自慢の装置がある)。

CDは、モーツアルトの交響曲全集の他に、石川さゆりと、岸洋子のアルバムが34枚しか置いていない。この時は、石川さゆりの表題のアルバムを聴いた。テネシーワルツ、君恋し、花、いい日旅立ち、などの有名な曲が入っている。名曲は、歌い手によって、違和感を覚えることが多い。その点、石川さゆりは、すべての曲を十分に自分のものとして聞かせてくれる。

「雪の降る街」が最後だったようで、音楽が止まった。ここで、窓ガラス越しに波の音が低い音量で耳に届いてくることに気がついた。真っ暗な海に目をやると、波止場の根元にある水銀灯の明かりが、海面に一筋の道となって反射している。その光が波の動きに連れて、不思議に変化している。石川さゆりの歌の終わりを引き継ぐのに、ふさわしい音と情景であった。五島の実家の冬の寒い夜の一人暮らしをしみじみ味わうことができた次第である。

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