今年の芥川賞



小説を読まなくなってから久しい。最後に、本を買って読んだ小説は、井上ひさしの「一週間」だと思う。その後は、(朝日)新聞連載小説として、宮部みゆき、吉田修一(高校の後輩)、および、夏目漱石の復刻シリーズを読んだ。また、昨年と今年の芥川賞作品は、文藝春秋に掲載されたものを読んだ。これは、同賞が掲載される9月に、たまたま、2年続けて入院したおり(前立腺癌の経過観察)、娘が暇つぶしのため、買ってきてくれたからである。どちらの作品も作者の名前は忘れてしまった。題目は、昨年が「コンビニ人間」、今年が、「紫色のスカートの女」である。

娘が読後の感想として、昨年と今年とでどちらが気に入ったかと聞いてきたので、どちらかといえば、昨年の「コンビニ人間」と答えた。「紫色のスカートの女」は、手法の新しさは認めるものの、才能に任せて書いた娯楽小説のような印象を持ったからである。作者が書きたいという意思は、「コンビニ人間」の方が勝っていると感じた。娘には、画家でいえば、ピカソとゴッホの違いかなと付け加えて言った。

一番、興味を持てたのは、今年の選者たちの評である(今、確認すると、小川洋子、高樹のぶ子、奥泉光、山田詠美、島田雅彦、川上弘美、宮本輝、吉田修一、堀江敏幸である。こんなにたくさんいたのには驚く。こんなに多いと、評価が平均的になってしまわないかと、気になる)。高樹のぶ子は、18年間続けた選者を今年で降りたそうである。彼女は、辞めるにあたって、芥川賞とその選考についての感想と思い出を、6ページにわたって書いている。彼女が選考委員を辞める気になったのは、他の選考委員達との評価意見の違いだそうだ。昨年の選考会で、「コンビニ人間」にたくさんの票が集まったのに対して、彼女はこの作品を理解できなかったと書いている。
今年の選考会でもそうだったのではないかと私は思う。

世の中に付いて行けなくなっているのは、私もである。つい先日、74歳になってしまった。文学作品はどうでもよいとして、政治や経済の動きと、その時流に乗っている人達の考え方や行動は、どうしても納得できない。高樹のぶ子は、余生を作家活動に当てるそうである。頑張って欲しい。私は、このような駄文を書きながら、生きている証にする。20年後に世界がどのようになっているかは、とても興味がある。私の墓前で娘に報告して貰いたい。


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