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ヒートポンプ方式冷暖房の効率が良い理由

  私は、ヒートポンプ方式の冷暖房の原理を、分っているようでいて、そうでもなかった。勉強して分ったので、要点を書き出しておく。ヒートポンプでは、冷媒と呼ばれる物質(液体/気体)が密閉された配管の中を次のように循環する   。   1  気体状態の冷媒を、圧縮機で ( 断熱 ) 圧縮すると温度が上がる   2   圧縮した高温冷媒から熱を奪う ( 熱交換 1) と温度が下がり、液体   に なる   3  温度が下がって液体となった冷媒の圧力を下げるとさらに温度が下がる   4   温度が下がった液体冷媒に熱を与える ( 熱交換 2) と気化   する   暖房では、熱交換器 1 は室内側に、熱交換器 2 は室外にある。室内の空気を熱交換器 1 に当てることで、空気が温められる。と同時に   冷媒の熱が奪われ温度が下がり液体になる。   室内器は熱交換のみであり、圧縮機などのその他は屋外器に設置されている。   原理は断熱圧縮と断熱膨張による冷媒の温度変化   にあると、私は正しく理解していた。また、断熱圧縮は電気を使う圧縮器で行うと考えたことも間違っていなかった。しかし、断熱膨張も電気を使う特殊な装置を用いているものと思っていた。調べてみると、単に液体弁を開閉するのみであった。冷媒の圧力が高くなっているので、たしかにこれで十分である。私の理解不足は、液体/気体状態変化をはっきりと認識していなかったところにもあった。     ヒートポンプが高効率である理由 ( 原理 ) はどこにあるのだろうか。その秘密は上の工程 4 にある。室外の熱交換器に外気を当てると外気の熱が冷媒に吸い込まれるからである。断熱膨張した   冷媒の温度は外気温よりも低くなっているので、こうなる。   何か不思議な気がしないだろうか。例えば、外気温は 10°C であり、室内温度は 20°C であったとしよう。冷たい外の空気を使って、室内温度をこれよりも高くできるのである。ヒートポンプは外気の熱を吸い上げて、室内に吐き出しているのである...

太陽光発電のその後

  太陽光発電導入の経過 については、すでに書いた。余剰電力をどうするかが課題であった。 九電への売電は、補助金を得る代わりに最初から優遇措置が使えない。売電価格は 1kW 時間当たり 7 円しかならない。買電は夜間 17 円、昼間は 34 円である。 浴槽投げ込み型の電熱器の失敗はブログに書いた。   専門業者に相談したところ、以下の案が出た。        -   蓄電池を設置      -   電気自動車を買って蓄電する      -   電気温水器をヒートポンプ式  ( エコキュート ) に取り替える     価格の点からもエコキュートが最良である。問題は我が家の風呂は井戸水を使っていることだ。家を建て変えた 16 年前には井戸水を使えるエコキュートが市販されていなかった。その問題は、井戸水に含まれるカルシュームなどがヒートパイプ配管にたまり詰まることだ。それで、電熱ヒータ式を使って来た。   これは、電力が 4.4kw と高く、我が家の太陽光発電装置  ( メーカ仕様は 5.4W, これまでの瞬間最大電力は 4.5kw)  には無理である。   これに対し、エコキュートは 1kw   ( ただし、発熱量は 3 倍くらいの 3kW 相当 ) であるから、これを使いたい。 調べてみると、日立製エコキュートに井戸水対応製品がある。しかし、価格が高い。井戸水をエコキュート配管に直接に流さないで、タンク内の熱水と熱交換して風呂に流している。間接的なので価格が上がる。   今回、買ったのは、長府製作所の製品である。   井戸水を直接温める方式だ。カルシウム付着の問題は、配管の途中に、セラミック粒子を多数有する箱を設けることで解決している。その原理をネット   で調べた。井戸水が流れるとセラミック粒子がこすれ合うことで、   わずかに帯電し、   この電荷がカルシウムが配管に付着するのを防ぐらしい...

国商 最後のフィクサー 葛西敬之

  国商 最後のフィクサー 葛西敬之 森 功 著  KODANSHA 2022 年 12 月 「実名証言で綴る国鉄改革裏面史」、「国鉄分割民営化で革マルと手を組み、右派・日本会議の黒幕として安倍晋三を裏で操った JR 東海「総帥」の実像」   以上は帯に書かれた広告文である。著者の意図がどこにあるかは想像できるであろう。それにしても、「国商」は目にしない言葉である。「政商」ならば分かる。日本国が将来どのようにあるべきかを國士として考え、日本を外国に売り込む商人という意味かもしれない。事実、主人公の葛西はリニア中央新幹線プロジェクトを促進し、米国に売り込むことを真剣に考えていた。  リニア中央新幹線は国からの口出しを嫌って、すべて自前で作る予定であった。しかし、 30 年間という長期の優遇金利で、政府の財政投融資を受けることになった。これには、アベノミクスの成功を支える意図があった。さて、リニア中央新幹線プロジェクトの行く末はどうなるか。私も甚だ疑問視する。   ブログに書く気になったのは、昔読んだ、別のノンフィクション、「瀬島龍三」(著者:保坂正康)を思い出したからである。葛西は瀬島龍三を師としていたと書かれている。葛西も瀬島も同じ匂いがする。自分の考えに固執し、時には個人的な動機で、国の未来を決める役割を果たす。その挙句の結果がどうなるかについては、深くは考えない。日本の指導者層に良くあるパターンである。 国鉄民営化の目的の一つが国鉄の労働組合 潰しにあったことが、詳細に書かれている点でもお勧めする。

 数学教科書、J. Stewart, Calculus, 7E, Early Transcendentals

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これは大学向けの教科書である。ネット検索で見つけた。下の写真がその表紙だ。ともかくその分量に驚かされる。本文ページ数 1,169 、付録 135 という代物である。いろいろな版がある。これは第 7 版。   まず、気になったのは、英単語 Calculus である。聞いたことがあるけど、はっきりした意味がわからない。調べてみると、「微分積分学」のことである。私が大学教養部で習った数学の本の題目は、「解析学入門」と「代数学と幾何学」であった。これらに対応する英語は、それぞれ、 Analysis 、 Algebra 、 Geometry であろう。微分積分は解析学の中に含めれていた。 Chat GPT によれば、 Analysis は Calculus を含んで、より専門的な内容とある。確かに、この本は、高校で習う数学の程度から始まっている。 日本と米国の平均的な学生の学力は、高校までは日本が上、しかし、大学になるとこれが完全に逆転すると言われている。この教科書を見ると、そのことがわかる気がする。色刷りの関数のグラフや表が多用される。また、練習問題が理解の程度に応じてたくさん出ている。ある程度の学力があれば、独習が可能だろう。物理学の本であれば、 Feynman の講義教科書にあたるだろう。   次に理解できなかった単語は、 Early Transcendentals である。哲学用語のようにも感じられる。調べてみると、なんてない。 Transcendentals  は、三角関数、指数関数、対数関数、など(超越関数:あまり聞きなれない)を表す単語である。それでも、その前の形容詞 Early が理解出来る人は少ないだろう。調べると、本の内容が積分を習う前に出てくることを意味するようだ。   パラパラと読んでみて、まず、気に入ったところは、数学の「概念: Concept 」 の理解を強調していることだ。「概念」 ( 私の言い方では「本質」 ) は、分かった時には、清々しい気持ちになる、という意味の言葉が書かれている。 気に入ったもう一つは、数学概念における極限の重要性の指摘である。限りなく近づくという感覚は誰にも分かるような気がする。しかし、この極限概念は、数学の天敵である無限大∞をあるいは...