国商 最後のフィクサー 葛西敬之
国商 最後のフィクサー 葛西敬之 森 功 著 KODANSHA 2022 年 12 月 「実名証言で綴る国鉄改革裏面史」、「国鉄分割民営化で革マルと手を組み、右派・日本会議の黒幕として安倍晋三を裏で操った JR 東海「総帥」の実像」 以上は帯に書かれた広告文である。著者の意図がどこにあるかは想像できるであろう。それにしても、「国商」は目にしない言葉である。「政商」ならば分かる。日本国が将来どのようにあるべきかを國士として考え、日本を外国に売り込む商人という意味かもしれない。事実、主人公の葛西はリニア中央新幹線プロジェクトを促進し、米国に売り込むことを真剣に考えていた。 リニア中央新幹線は国からの口出しを嫌って、すべて自前で作る予定であった。しかし、 30 年間という長期の優遇金利で、政府の財政投融資を受けることになった。これには、アベノミクスの成功を支える意図があった。さて、リニア中央新幹線プロジェクトの行く末はどうなるか。私も甚だ疑問視する。 ブログに書く気になったのは、昔読んだ、別のノンフィクション、「瀬島龍三」(著者:保坂正康)を思い出したからである。葛西は瀬島龍三を師としていたと書かれている。葛西も瀬島も同じ匂いがする。自分の考えに固執し、時には個人的な動機で、国の未来を決める役割を果たす。その挙句の結果がどうなるかについては、深くは考えない。日本の指導者層に良くあるパターンである。 国鉄民営化の目的の一つが国鉄の労働組合 潰しにあったことが、詳細に書かれている点でもお勧めする。